本を読んでいくブログ(新)

読書記録。テーマは主に歴史、外国語学習、レシピ、手芸など。

『絵で見る十字軍物語』塩野七生 新潮社

去年、西洋の中世〜近代の歴史の本を集中的に(数は多くないですが)読んでいた時に、十字軍のことも知りたいなあと思っていました。

フランスとかイングランドなど国の歴史としてまとめられている本を読むと、十字軍の扱いが小さいようです。十字軍にかまけてて国が留守だったとか、その程度。

それは各国史を書く上では仕方ないと思うのですが、十字軍の影響を想像すると、その程度で(私が)済ませておいてはいけないだろうと思っていました。

 

この本は普段行かない図書館によった時に、書棚で見つけて借りてきました。

「絵で見る」のフレーズに惹かれまして。。と同時にいつかは読みたいと思っていた塩野七生先生の初めての本、になると思います。敬遠しすぎてもう何年も経ってます、読んでみたいと思ってから。。。

 

前書きによると、

19世紀の歴史作家フランソワ・ミショーの文章にギュスターヴ・ドレの絵、約100枚を載せた『十字軍の歴史』という本がある。

その挿絵に惹かれた著者がその挿絵を見開き2ページの左半分にその絵を一枚ずつ順に載せ、右ページでそのロケーションの地図、そして簡潔な解説を載せて紹介していくという体裁。

第一次十字軍から順に話が続いていくので、十字軍初心者にはありがたい本だと思います。文章読む量少ないし(!)、地図もある、イラストも綺麗と3拍子揃い。

最後はレパントの海戦です。

 

十字軍の始まりの部分が、ちょっと衝撃的でした。

イェルサレムへの聖地巡礼は、基本的にはイスラム教徒側も「聖地巡礼」そのものに理解があり、助け合うこともあったりしたが、それでも突発的に起こる迫害、横暴の類を解決するには聖地奪回しかないということで十字軍が結成されていった。最初は一般人だったが次第に君主レベルが参加するようになり騎士団も結成され〜と大規模に。

純粋すぎるというか単純すぎるというか、これだけの人が一途に着の身着のまま、かどうかはわかりませんが、兵站の用意もない状態でフランスあたりからイェルサレム目指すって、もうなんと言って良いか言葉も出ません。

こんな大群が近寄ってきて収奪強奪が予想されるとあっては、迎える側がキリスト教徒であっても恐怖でしか感じないでしょう。ということで途中、キリスト教圏のハンガリーあたりで攻防戦とかやってます。

 

イェルサレム陥落させた時、周辺のイスラム太守たちは単なる富や領土を求めての侵略だと思っていたので年貢金を収めるから、うちには攻めてこないでくれみたいなことを申し出たらしいのですが、十字軍側は拒否。

宗教戦争とは宗教という理由で「やめられなくなる」戦争のことです、みたいなことをかの倉山満先生がおっしゃってましたが、まさにそんな感じでしょうか。後世の人間である私が勝手なことを言うようですが、どうもいろんな場面で「やめ時」を逃してる様に見えます。 

 

あと、十字軍の余韻というか、それらしい十字軍と言う遠征計画が失敗に終わり、素人のどんなに下手な推測でも、神を信じていたのに、とか、神がついていたはずなのに、といった絶望感などはあったと思うんです。

そこに大雑把すぎるかもですが、紆余曲折はあったにしろオスマントルコレパントの海戦で勝利、イベリア半島を取り戻したと言うところでルネサンス時代、大航海時代の始まりという流れなんですね。と、納得しました。

 

いえ、高校生の頃に世界史で学びましたし、順番も知ってはいましたが、十字軍の高揚した気分とか絶望とか切羽詰まった感とかをこの本でプチ追体験して、中世の終わりをプチしみじみと味わえた感じがします。

 

この本で十字軍の流れを掴んでからだと、さらに読んでいくのも楽になると思います。塩野七生先生の十字軍物語に続けるのが妥当でしょうか。

 

今年に入ってから読み始めた歴史本は、宮脇淳子先生の朝鮮半島の歴史本が最初で、これが2冊目といったところですが、幸先いい感じ🎵。楽しく読みました。

 

akk444.hatenablog.com

 

今、これといって読みたい歴史のテーマが 決まっていないので、しばらくはあれやこれやと読んでいくことになるかと思います。

 

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